登山のプロが語る
エネもちを常備する理由とは。

スポーツの補給食として馴染みのあるエネもち、実は登山との相性もいいんです。
安心・安全な登山のために欠かせない補給の考え方やエネもちの活用方法について、マウンテンガイド協会会長の平川陽一郎氏にお聞きしました。

平川陽一郎

マウンテンガイド協会会長。学生時代から山一筋で、1991年にはヒマラヤ・シシャパンマ(8,027m)遠征を経験。登山用品店の店長や製品開発を経て、現在は北アルプス等での講習や「finetrack」のパートナーズオフィサーとして活動。メディアや全国の講座を通じ、過酷な環境で学んだ「命を守る技術」と山の安全啓蒙を分かりやすく解説。「山の安全と楽しさを身近に」を掲げ、次世代の育成に力を注ぐ。

登山中の事故を防ぐ補給食

――すでにお使いいただいていますが、エネもち(Enemoti)は、元々は屯田兵の携帯食だった製品を基に開発された北海道の「きびだんご」をスポーツ向けにアレンジし、2017年に完成しました。単に美味しいだけでなく、パラチノースという糖質を入れていて、血糖値を緩やかに上げて持続させる工夫をしています。

そこで、登山を楽しむ皆さんにも携行していただきたいという想いから、平川さんにお話を伺いたいと思っています。

平川陽一郎さん(以下、平川) はい、私もいただいて味も気に入っています。 私の活動にはふたつのポイントがあって、「登山者を増やしたい」ということと「防げる事故を防ぎたい」ということ。

そのためにも、登山中の補給をどうするか、というのは非常に重要だと感じています。エネもちのような固形物は、咀嚼することで胃腸の動きが活発になり、その後の補給もスムーズに受け入れやすくなります。

登山でも血糖値のコントロールは非常に重要なんです。登山は特殊なスポーツで、ランニングよりも圧倒的にペースが遅い。でも、消費カロリーは「行動時間(h) × 体重(kg) × 5(係数)」という簡易式で計算すると相当な量になります。
たとえば3000kcal消費するなら、補給食として考えると、ご飯15杯分も必要になってしまいます。そんなに食べられないですよね(笑)。

だから、バテないためには「こまめにずっと食べている」ことが大事なんです。40分歩く間に、20分ごとに1〜2分の休憩「マイクロレスト」を入れて心拍数と血圧を下げる。そして40分経ったら5分休んで、しっかり補給するよう、ガイドの際はいつも声掛けをしています。

――登山する際の注意点として何かありますか?

平川 遭難の原因ベスト3は「道迷い・転倒・滑落」ですが、最近は「疲労」も増えています。エネルギー不足で足が出なくなったり、集中力が切れて判断を誤ったりする方も多いです。

脳と足の筋肉疲労はエネルギー不足が原因で、それは大敵です。水分をしっかり摂ることは当然ですが、固形物を摂ることも忘れてはいけません。

ただ、口から入ったものは3時間経たないとエネルギーに変わりません。結構いらっしゃるのですが、頂上で、お昼ご飯をガッツリ食べて下山のエネルギーチャージをしているつもりでも、3時間後には下山し終わっていますよね。これだと帰りのエネルギーチャージのタイミングが遅いんです。

だからこそ、エネもちのような「食べやすくてエネルギー効率の良いもの」をポケットに入れて、常にチャージしておくことが安全につながります。

――登頂してからお昼を食べるというのが当たり前だと思っていました。

平川 そうですよね。登頂して山頂でお昼を食べるという人も多いのですが、山頂って一番条件が悪いんです。

標高が100m上がると気温が0.6℃下がって、風速1mで体感温度が1℃下がります。頂上では見晴らしはいいかもしれないけれど、少し下りた風の来ないところで休憩することを勧めています。

半日登山ならなんとかなっても、1泊2日や3日・4日と長くなると、それなりにダメージが溜まってきます。その場合は、きちんとエネルギーになるものをどのタイミングで摂るかというのがさらに重要になってきます。

日帰り2本、1泊2日で4本が目安

――エネもちの携行量の目安を教えてください。

平川 イメージとしてはハーフマラソンが日帰り登山、フルマラソンが1泊2日と考えてもらうといいかもしれません。

エネもちは、1本で145kcal~156kcalあるので、おにぎりでいうとだいたい1個くらいですね。そのため、日帰りで2本、1泊2日で4本くらい味を変えて持っていくといいでしょう。

心配なら1本多めでもいい。というのも、飲み尽くし・食べ尽くして下山するのもよくないからです。

下山中に事故が起こった場合、登山者の心理としてなんとかなると思ってしまいすぐに連絡せずに、大体切羽詰まってからSOSを出すんです。だいたい15時くらいですね。そうすると、どう早くても救助まで2時間はかかります。さらに暗くなってきたら、救助隊も二次遭難する可能性もあるので「一晩待ってください」という状況になるんです。

山は特殊な環境で、動物もいるし、寒くなるし、しかも明かりはゼロ。非常に不安で、あちこちに連絡してスマホのバッテリーも尽きる……という状況に陥り、救助隊からの連絡もつかないし、怖い思いをすることもあります。

でも、身体を覆うシートと、とりあえず食べ物があるとすごく落ち着けます。少しずつ食べるためにも、予備が1本あったほうがいいのは、こういう理由もあります。

また、激しく消耗するルートや1日の距離が長いという場合は、さらに+1本持っていくといいと思います。

――命を救うためにも持参する補給食をしっかり厳選して見極める必要があるんですね。そのうえで、美味しい補給食を選びたいです。

平川 私たちの中では、登山も科学という考え方なので、実は補給食は「美味しい」というのも重要なんです。

エネもちの中では、私はクルミ餅が一番好きです。お醤油の甘じょっぱさとクルミの食感がとても良いと思います。夏場など汗をかくときは塩餅がいいですね。

それと、私がオススメしたいのは、ちょっとしたアレンジ方法です。

たとえば、エネもちに塩昆布をプラスすると塩分も摂れていいな、とか、温めて食べるともちもち感がアップして美味しいな、とかね。

あるアルピニストの方は、お餅をココアで溶かして食べると、美味しいし食べやすくなると言っていました。もちろん命を救うための補給食ですが、そうやって工夫したり、情緒的に楽しむこともあるので、山は奥深いなと感じますね。

また、季節によっても工夫が必要です。冬場は特に、エネルギージェルやバーなどはカチカチに凍って歯が折れそうになることがありますが、エネもちは冬でも食べやすい。味とは違いますが、真夏以外は手袋して登山をするため、手袋をしたままでも食べやすいパッケージなのも良い点です。

山では条件が整った環境ではないので、歩きながら、あるいは風の強い山頂でもサッと出せて食べられる「行動食」という考え方が一番理にかなっています。

平川 登山にはいろいろな目的があると思いますが、皆さんに共通しているのは「趣味の登山を安全に楽しみたい」という点です。

何かアクシデントを起こしに行こうという人はひとりもいないわけです。ただ、一番みんなが不安に思うのは「ちゃんと帰れるかな?」という点で、それが心理的な負担になっています。

それを軽減するために必要なのが、十分な準備をすることです。私は「準備が8割」といつも言っていますが、もちろん補給の準備もそれに含まれます。

安全な登山は、適切な補給から。エネもちを活用しながら、これからも安心して山を楽しみましょう。

登山にオススメポイント

ちょこちょこ食べに最適

一度に食べ切る必要はありません。エネもちは一度開けても、袋に戻して携行できるため、休憩ごとに数口ずつ食べる「分割補給」にぴったりです。

冬場はポケットで温める

冬は体に近いウェアのポケットに入れておくと、体温で温まり、凍らずに美味しく食べられます。

自分流の味変を楽しむ

単体で食べるだけでなく、他の食材との組み合わせもオススメです。また、アレンジすることで、飽きずにチャージできます。

平川さん流アレンジ方法

くるみ餅

クルミ餅

ナッツをプラス。素焼きではなく塩やスパイスの効いたものがバツグンに美味しい。

塩餅

塩餅

塩昆布。塩分補給にもなる。

甘酒餅

甘酒餅

チューブの梅干しを。紅茶と合わせるのもオススメ。

エネもち携行本数の目安(1本あたり約145〜156kcal)

消費カロリーと脱水量の7割以上を補給できているか、が重要です。これを基準に、40分ごとの休憩で分割して食べることを想定した目安です。

日帰り(4〜6時間)

【夏・秋】1〜2本 / 【冬】2〜3本
※休憩のたびに数口ずつ「ちょこちょこ食べ」をする。

1泊2日(小屋泊)

【夏・秋】3〜4本 / 【冬】4〜6本 ※エマージェンシー用として+1本あると安心。

2泊3日(小屋泊)

【夏・秋】3〜4本(※各日分) / 【冬】多めに携行 ※行動食+到着後のリカバリー用。

状況に合わせた補給の注意点冬場は多めに携行する冬は体温維持のためにエネルギーを激しく消費するため、夏場よりも1.2〜1.5倍程度多めに用意するのが安全策です。